新しい防災への挑戦 地域防災情報ネットワークシステム
伝統的建造物や文化財を火災から守る
ネットワークシステムの構築
国内には、何十年も前に建てられた古い建築物が立ち並び、町並み自体が文化財となっている、「重要伝統的建造物群保存地区(以下、重伝建)」と呼ばれるエリアが約120ヶ所あります。これらの木造密集地エリアは、もし一度火が付いてしまうと燃え広がって、大火になる危険をはらんでいます。私たち能美防災は、これらをどうにかして守れないかと考えました。 そこで、こうした重伝建や文化財周辺などのエリアにおける火災被害を最小限に抑えるための情報ネットワークシステムを開発しました。それが「地域防災情報ネットワークシステム」です。
営業エピソード EPISODE
素早く火災の情報を共有することで、
地域の自助・共助・公助を促し、防災力を高める。
従来の防災システムは住宅用火災警報器や各施設の火災報知設備が火災を見つけた後、建物内の避難誘導を促す形で、基本的には建物ごとに独立したシステムが主流でした。しかし、本システムは各建物の火災情報を、独自の無線通信ネットワークとクラウドサーバーに経由させて、近隣住民や建物外にいる施設関係者のスマートフォンなどへ通知し、エリア全域の火災情報をリアルタイムで共有することを可能にしました。これにより、火災情報を受信した関係者が、即座に現場に駆けつけ、火災確認、初期消火、避難誘導などの初期対応を協力して行うことができます。エリア全域に警報を鳴らすスピーカーやベルを設置するとかなりのコストがかかりますが、携帯やスマホはすでに多くの方が所持しているため、これらを利用することで、導入コストを抑えつつ、素早く火災情報の共有を行うことができます。
助け合いの形には、自分で自分の身を守る「自助」、互いに助け合う「共助」、市や国による「公助」の3つがありますが、本システムで情報を共有することで、地域の自助・共助・公助へとつながるものにしたいと考えています。
最初のミッションは導入実績を作ること。
新たな種をまき、防災領域の拡張を目指す。
当社は業界最大手ではありますが、このままではいけない、これからの変化に対応するために、新しい何かを企画できないかと考えていました。近年は火災に限らず、これまでとは異なる災害が多数発生しています。そういった災害への防災領域の拡張を探っていたときに、この地域防災情報ネットワークシステムというお話をいただきました。
私はこのシステムの開発段階から携わっていて、営業部署として、これをどのように販売していくのか検討することが使命でした。そこで考えた初めのミッションは導入実績を作ること、1号物件受注に向けた検討でした。実績があれば、他のお客様も導入を検討しやすくなりますし、実際にシステムを使っていただくことで、もっとこうして欲しいという、新たなニーズを得ることができます。テストサンプルの段階から営業をかけ始め、やっと1つの案件で好感触を得ることができた時、2年が経過していました。
大変な道のりでしたが、システムの良さや防災の重要性をご理解いただけても、法律上の設置義務も納入実績もないものを予算に組み入れるのは、お客様にとっても大変なことですから、必要な時間だったと思います。
こうした新しいシステムを絡めていきながら、少しずつ新たなビジネスとしての柱を立てていきたいと考えています。始めは小さい柱でも、徐々に大きくなって安定してくれれば良いので、まずは少しずつ種をまいて芽が出るようなことをしていきたいです。
※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです。